ピンホールカメラ
作製テキスト
ピンホールカメラの原理
暗箱にピンホールを開け、そこから入る光を印画紙(感光体:フィルムでも可)で記録する。光は直進するため、一点(例えば:木の先端)から出た光は、ピンホールを通過し感光体の一点に到達します。そのため、ピンホールが小さければ撮影した写真の解像度は高くなります。しかし、あまりにピンホールが小さいと光の回折により解像度が低下します。また、ピンホールが小さければ入る光の量が少なくなり露光(撮影)に時間がかかります。
現像して出来たネガを新しい印画紙に密着焼きをしてポジを作製します。
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露光時間
ピンホールカメラは、レンズを使用しないのでパンフォーカス(すべてのところにピントが合っている状態)ですが、便宜的にピンホールから感光体までの距離を焦点距離とよんでおり、通常のレンズの明るさ(F値)は、カメラの明るさとして、焦点距離をピンホールの直径で割った値を用いています。その関係から、露光時間は焦点距離が2倍になると4倍の露光を必要となります。また、ピンホールの直径が2倍になると、ピンホールを通過する光量が4倍になるので露光時間は4分の1になります。
焦点距離と画角
焦点距離が短いと画角は広く(広角)なり、焦点距離が長くなると画角は狭く(望遠)なります。
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感光体
フィルムを感光体とする場合、ISO100の感度のフィルムでも印画紙に比べ約20倍の感度があります。感度が高い分、露光時間を短縮できますが、カメラの遮光性に十分配慮する必要があります。また、印画紙に比べなめらかなグラデーションを得られます。しかし、暗室の安全光でも感光するためネガの濃淡を目視して調節することが出来なくなります。
印画紙を感光体として使用する場合、像が硬調になるため出来るだけ軟調のもの(2号印画紙)を使用します。写真の初心者を対象とする場合は、暗室の安全光下で作業ができるため印画紙を感光体としたほうが扱いやすく、理解も深まります。
標準的なピンホールカメラの目安
感光体:2号印画紙(6.5×9.0cm)
ピンホール素材:アルミ箔
ピンホール直径:0.3mm
焦点距離:40〜80mm
これで作製したピンホールカメラは、下記表の露出時間を目安に撮影します。
焦点距離 |
40mm |
60mm |
80mm |
晴れ |
1分 |
1分30秒 |
2分 |
曇り |
2分 |
3分 |
4分 |
テスト撮影
印画紙の装填
フィルムの代わりに印画紙を使用します。暗室電球を点灯しピンホールカメラに印画紙を装填します。
撮影(露光)
撮影はカメラを置いて行います(手で支えているとどうやってもぶれてしまいます)。テスト撮影の時は、2分(快晴の場合は、1分でも可)露光(シャッターを開ける)します。
現像
テスト撮影の場合、現像は90秒、停止15〜30秒(現像液を洗い流す程度)、定着3〜5分行います。定着液に印画紙をつけたら光を当てても大丈夫ですが、すぐに取り出さずに指定した時間そのままにしておきます。その後、流しで水を流しながら3〜5分程度水洗します。
注)現像をうまく行うには印画紙の端を箸ではさみムラが出来ないようにゆすりながら現像することが重要です。入れたままにしておくと、印画紙表面の現像液が消耗して現像ムラになります。
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露光時間の調整
テスト撮影の結果を見て、撮影時の露光時間を調節します。できたネガが濃ければ露光時間を短くし、うすければ露光時間を長くします。
撮影本番
撮影
テスト撮影がおわり、露光時間が決まったら、本番の撮影です。
現像
テスト撮影の場合は、現像時間は90秒としましたが、特にこの時間にこだわることはありません。現像をしながら、ちょうど良い濃さと判断したところで停止液に移し現像を止めます。定着・水洗はテスト撮影時と同じです。
ポジの作成(ネガの反転)
露光
現像してできたネガを反転させてポジを作ります。未感光の(新しい)印画紙の表を上にして置き、その上にネガの像が出ている面を下にして重ねます。更に印画紙が密着するようにガラスまたはアクリル板等で抑えます。光源は白色電球を使い、印画紙から30cm程間隔をあけ上から光を当て露光します。露光時間は、ネガの濃度によりますが、0.5〜2秒程度です。
現像
ネガの現像の場合と同様に現像、停止、定着、水洗、乾燥の順に行います。
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写真の原理
光に反応する物質として、ハロゲン化銀(特に臭化銀)を使用します。光があたるとハロゲン化銀の結晶の一部が反応し金属銀(潜像核)を生じます。これを現像液(還元剤)で処理することにより、潜像核(現像核)周辺のハロゲン化銀を還元します。停止液(うすい酢酸水溶液)により中和することにより現像を停止します。定着液は未反応のハロゲン化銀を溶解し取り除きます。